ドイツ「少子化問題」の深刻
労働力不足とインフラ崩壊の二重苦
2013年9月号
「ヨーロッパの独り勝ち」とされるドイツの将来に、暗雲がたれこめている。日本より遥かに進んだ対策を導入しながら、少子化問題が大きなネックとなり、移民の大規模流入がなければ経済が立ちゆかなくなっている。自慢のインフラもほころびが著しく、経済大国としての行方に陰りが見える。九月二十二日の総選挙後の独政界にとって、社会の抜本的変革は待ったなしの課題になった。
総選挙直前の八月、アンゲラ・メルケル首相率いる連立与党の看板政策が始まった。「待機児童ゼロ」を目指して、一歳以上三歳未満の子供全員に、「全日制保育園に入園する権利」を与える、というものだ。家庭にとどまる場合は、毎月百ユーロの現金を支給する。ユーロ危機の中での大盤振る舞いで、母親の職場復帰を促す少子化対策だった。
ところが、施行初日の八月一日から、新政策は挫折した。公共放送ZDFの女性記者が、自分が住むフランクフルトで、一歳半の子供を連れて「体験ルポ」をしたところ、どの保育園でも門前払いだった。
「今年の入園はもう締め切っています。空きを待っている人は三百六十四人です」
「その数字には、元気がでますね。分かりまし・・・