失笑買う三井不動産のアジア事業
「バブル崩壊前夜」の不可解な進出
2013年9月号
「締結式を終えたばかりの三井不動産役員の安堵するような表情が忘れられないよ。『社の命運をかけて』って言っていたそうだけど、そんなに日本の不動産事情は将来に期待が持てないのか? 記念撮影の時も、ずいぶんと顔が緊張しているように見えたなあ。カメラマンが撮り直しのために何度もシャッターを押していたよ」
こう話すのは、経済成長が続くタイで、急速に業績を拡大する不動産開発アナンダ・ディベロップメント(ANAN)の営業担当者。三井不動産との間で、六月十八日付で設立を決めた合弁会社の記念式典を振り返り、「異様」な光景を何度も繰り返し語った。
日本で不動産大手三社の一角を占める三井不動産が、今年に入ってから急速な海外市場シフトに舵を切りつつある。中でも注目は経済成長の続く東南アジアだというが、合弁相手は「高級志向のバブリーな不動産会社ばかり」(タイの財閥系不動産会社役員)だ。
タイ―。なかでもここが三井不動産の東南アジア事業で最大の懸念材料となりそうな「鬼門」である。合弁相手ANANは、業界から「アジア通貨危機に乗じて売り上げを伸ばした」(同前)と揶揄される新興企業だが、同社は・・・