三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

スンニとシーア「宗派戦争」の行方

中東炎上に油を注ぐサウジの「真意」

2013年9月号

 エジプト軍による巻き返し、同胞団弾圧、シリアにおける化学兵器の使用と大きな歴史の節目を迎えている中東政治だが、ともすれば、的外れな議論が横行しがちである。しかし中東世界の出来事は、およそ欧米の物指しで評価すべきでなく、歴史を踏まえ、その社会がどのようなステージにあるかを知った上で語らなければならない。

 今日の中東政治を構造的に捉える上で最も重要な歴史上の政権奪取は三つある。

 その一は、サウジアラビア王国を再興し、現在の繁栄の基礎を築くこととなったイブンサウド(アブドラ現国王の父)の政権奪取である。いくつか重要な段階があるが、クウェート首長に馬と兵員を支援してもらい、わずか四十人の手勢で仇敵ラシード家のイブンアジュランの寝首を掻いたリヤドの戦い(一九〇二)を挙げよう。この奇襲の成功でネジド地方(アラビア半島中央部)を実効支配したイブンサウドは、後にハーシム家(預言者ムハンマドの末裔、現ヨルダン王室)をメッカ、メディナから追放してアラビア半島のほとんどを支配する安定国家を築いた。ワッハーブ主義という厳格なスンニ派過激主義の教義を墨守し・・・