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連載

追想 バテレンの世紀 連載89

日本人司祭養成の問題
渡辺 京二

2013年8月号

 マカオへ追放されたイエズス会宣教師と日本人同宿たちは、マカオでたいしてすることもなく、にわかにふくれ上ったイエズス会関係者をどう扶養するかという問題もあって、鬱屈した日々を送らざるをえなかった。秀吉の先例もあることだし、やがて禁令も緩むのではないかという期待も、日を経るに従って薄れる一方、そうした閉塞感はついに西洋人司祭と日本人同宿の紛争をもたらすに至った。

 これはひとつには、日本管区長カルヴァーリョの人柄の問題が絡まっていた。同僚の宣教師たちがイエズス会総長に訴えた数々の書簡によると、彼は同僚たちとともに事を計るのを好まず、独断専行を常とし、同僚たちのやる気を喪わせた。そればかりではなく、居室は常に果物や菓子やワインで一杯で、その飲食の娯しみへの慎しみのなさは同僚の顰蹙を買った。眠る時にはイルマン(修道士)に「ヴィオラを弾きながら眠りを誘う歌を裏声で歌わせた」。しかもプロクラドール(会計係)に一〇〇〇クルザドの自己資産を預けて、利殖を計ったといわれる。また彼は、司教セルケイラと日本の領主の前で席次を争い、司教と絶交状態にあった。

 トー・・・