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連載

日本の科学アラカルト36

排熱から電気を取り出す 熱電変換研究

2013年8月号

 生活に欠かせぬ電気を得る方法は多岐にわたって存在する。雷のような自然現象以外で人類が初めて電気を取り出したのは、二種の金属のイオン化傾向の差を利用した「電池」によるものだった。これは化学的エネルギーを電気として取り出している。

 現在では運動エネルギーを発電機を通じて電気エネルギーに変換するのが使用量の面で最もポピュラーだろう。運動エネルギーの源は、化石燃料の燃焼エネルギーであったり、自然エネルギーの場合もある。また、太陽光発電は光エネルギーを直接電気に変える。

 主流ではないものの、近年改めて見直されている発電方法が「熱電発電」だ。

 異なる二種の金属間に温度差があると電力が生じる「ゼーベック効果」を利用する発電で、原理自体は十九世紀初頭に発見されていた。メリットはシンプルな構造で温度差さえあれば長期にわたって発電することができることで、かつては安定した電源確保が難しかった遠隔地の電源などに使用されたという。また、人工衛星のいわゆる「原子力電池」も熱電発電の原理が使われている。

 その後、電力網・・・