米国の農業は強くない
農薬と補助金依存の「病的」な産業
2013年8月号
今年の夏も、北半球はこぞって猛暑だ。観測史上最も暑かったゼロ年代に続き、一〇年代も熱波続きで、地球温暖化の進行がいよいよ市民生活に迫っている。ところが、気候変動で最も影響を受ける米国の農家は、地球温暖化の議論をはなから拒否し、米政府の保護下で、「工業的」と形容される大規模農法に邁進している。化学会社や食品関連企業の後押しで、遺伝子組み換え作物(GMO)が驚異的に普及し、ハイテク化が進む一方だ。
米政府は、こうした農法を新興国に輸出する一方で、日本や欧州連合(EU)との通商交渉でも米国農業の受容を迫っている。だが、高い競争力を誇る米国の農業は、一皮むけば世界屈指の補助金制度に支えられたものであり、寡占的なアグリビジネスの下で、国際ルール、安全性、地球環境を脅かす存在になっている。
「世界に冠たる農業保護国」
同じ猛暑でも、米国は大陸的規模を持つ。
農業地帯のグレートプレーンズでは今春以来、凶暴な竜巻、豪雨、猛暑と連続パンチが続いた。ロッキー山脈の西側では、乾燥と熱波・・・