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経済

日本原子力産業に「弱体化」の兆し

空白の「二年間」で優位性消滅

2013年7月号

 ここへきて、日本原子力関連メーカー関係者は沸き立っている。一部の慎重論を押しのけて原子力発電輸出に前のめりの安倍晋三首相による中東歴訪で、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビアと原子力技術の平和利用を内容とする原子力協定の合意と協議推進が約束された。二〇一三年五月下旬には、インドのマンモハン・シン首相との会談で原子力協定交渉の再開で合意した。早ければ、一四年一月にはインドと原子力協定が締結されるはこびだ。原発輸出に再び光明が差し始めているのだ。  実際の原発商談でも、二月に東芝がフィンランドで優先交渉権を獲得、五月には三菱重工業―アレバ連合がトルコで四基、総額二兆円の建設事業の優先交渉権を取得した。また、六月にはチェコの原発二基建設で東芝―ウェスティングハウス(WH)連合の受注が確実となった。福島第一原発事故で臥薪嘗胆を余儀なくされていた日本の原発企業は今、勝利の美酒に酔いしれている。  日本が世界に誇る原子力発電技術の輸出は、アベノミクスが掲げる「成長戦略」の一翼を担うとされているだけに、政財界挙げての原子力発電輸出への動きに、メディアも歓迎ムード一色だ。し・・・