ドイツ「一極支配」が進むEU
カネと人材「独り占め」の様相
2013年7月号
ユーロ圏各国経済が、「先祖返り」を始めた。金融機関が域内での事業や投資を急速に縮小し、単一通貨導入でいったんは進行した経済統合が、次々と解消に向かっている。代わって現れたのは、政治・経済両面で圧倒的な力を蓄えたドイツ。一極支配が進む状況に、「これでは第四帝国だ」という恨み節も聞こえてくる。
南欧の優秀な若者をかき集める
ベルリンの絶景ポイントは、一般人では立ち入れない。築十二年の首相官邸から、特殊な防弾ガラス越しに、国会議事堂を望み、ピカピカのドイツの心臓部を見回す場所である。アンゲラ・メルケル首相の自慢でもあり、二〇〇八年には、大統領当選前のバラク・オバマを迎え、笑顔で記念撮影した。
ここから首相は指令を発信する。「ドイツ首相の発言」は今、米大統領や中国の国家主席並みに、たちまち欧州一円に伝えられる。ギリシャやスペインなど重債務国はもちろん、域外のトルコにも、首相の言葉は重く響くからだ。
六月半ば、英公共放送BBCを迎えた時には、「若者の失業問題」を主題にした。メルケル首相は「雇用機会を求めて、どこへでも行け」と語った。ユーロ圏では、・・・