このコラムでもくり返し指摘してきたように、現在日本人の栄養は悪化の一途をたどっている。熱量摂取は敗戦直後で飢餓状態であった一九四六年の一千九百三キロカロリーを割り込み、一千八百四十キロカロリーとなっていて、まだ下げ止まらない。平均寿命は女性は二年連続、男性もこの一年、低下した。かつて世界一を誇った男性の平均寿命のランクは八位まで下がり、女性もついに香港に首位の座を明け渡した。世界におけるランキングが下がるだけならまだしも、平均寿命の数値そのものの低下はかなり深刻なことと受け止めなければならない。

　この低栄養化の要因に関しては、拙著『肉を食べる人は長生きする』（ＰＨＰ研究所）で述べたので、ここではくり返しを避けたい。しかし、その要因の一つにカロリー制限による寿命の延伸というラットの実験結果があることはもう一度確認しておく必要がある。

　欧米先進国は、二十世紀初めには平均寿命五十歳の壁を突破した。後発資本主義国であった日本の平均寿命が三十歳代の後半に低迷していたのと対照的である。日本はきわめてユニークな国である。二十世紀の百年間に熱量摂取がほ・・・