トヨタ生産体制に深刻な「断裂」
苛烈なコスト削減で下請けが淘汰
2013年6月号
一兆八千億円―五月八日に開かれたトヨタ自動車の二〇一三年三月期決算会見で、豊田章男社長が高らかに宣言した一四年三月期の連結営業利益予想だ。同社にとっては過去二番目に相当する高い営業利益だが、早くも巷では上振れから〇八年三月期に記録した二兆二千七百三億円の過去最高を更新するのではないかとの見方まで出ている。
こうした好決算はアベノミクスによる大胆な金融緩和策で、にわかに現出した円安効果が最大の要因だが、加えて「年率三%」ともいわれる部品メーカーへの苛烈な値下げ圧力による利益の収奪がトヨタ本体を潤している現実は指摘するまでもない。トヨタにとっては、まさに「我が世の春」の再来だが、その足元では疲弊しきったサプライチェーン(部品供給網)の崩壊という「時限爆弾」が刻一刻と残り時間を刻んでいる。
円安がサプライヤーの経営を圧迫
五月二十日、豊田章男社長の姿はドイツ・ニュルブルクリンクにあった。レーシングスーツを身にまとい、「ニュルブルクリンク二十四時間レース」で自らハンドルを握り、百七十五台中の総合三十七位でフィニッシュ。章男社長が走行したのは二時間半だっ・・・