アジアで悪評まき散らすユニクロ
初手から躓くグローバル化戦略
2013年6月号
国や歴史、文化、風土が異なれば、それぞれの土地で働く労働者の「労働」に対する考え方もおのずと異なる。東南アジア経済の中心地タイでは、伝統的に労働に対する報酬は額面だけで評価されることはなく、「最終的に手元にいくら残り、それが十分かどうか」と考えるのが一般的だという。無理をして身体を壊してしまっては治療費もかかるし、当面、仕事にも出られない。何よりも、大切な家族と過ごす時間が少なくなる。
そうした労働観が深く浸透するタイで今、「伝統的な労働市場を破壊する可能性がある」(タイ労働省関係者)として大きな波紋を呼んでいる企業がある。アパレルチェーン「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングだ。柳井正会長兼社長がぶち上げた「世界同一賃金化」を旗印に新興国におもねるかのような「グローバル戦略」を展開する同社だが、当の新興国市場で初手から躓いた格好だ。
関係機関が調査に乗り出す
バンコク中心部の商業施設に入居するユニクロの店舗で、商品管理を担当していたピンさん(仮名)は、あの日のことが忘れられない。一緒に採用された幼馴染みのソムさん(同)が突然、ユニクロを・・・