東急の危うい海外「再進出」
ベトナムでの不動産事業に前のめり
2013年6月号
昨年四月開業の複合商業施設「渋谷ヒカリエ」誕生に続き、東急東横線の地下化、そして現在は東急百貨店東横店の建て替え―。東京有数のターミナル駅である渋谷駅周辺は今、二〇二七年まで続く一連の大規模再開発事業で大きく様変わりしようとしている。
それに伴い、施主である東京急行電鉄の有利子負債残高(一二年度末時点)は現在、実に一兆円を超える規模に膨らんでいる。人口減少によって本業の鉄道事業の成長が見込めない中、新たな収益源の確保は急務だ。そうした中で東急がいま、前のめりで手掛けているのがベトナムでの「不動産事業」である。
東急はかつて電鉄系企業では最も積極的に海外でホテル・リゾート開発事業を展開してきたが、バブル崩壊により深手を負って以降、海外事業は長く「封印」されてきた。その東急がここにきての海外進出。まさに社運を賭けた事業だが、その先行きには早くも暗雲が濃く垂れ込めている。
合弁相手はいわく付きの省営企業
ベトナム南部ビンズオン省―、最大都市ホーチミン市の北に隣接する、この新興工業地帯が東急のベトナム進出の舞台だ。二十八もの工業団地があり、日本・・・