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欧米を悩ます「貧者のジハード」

ネットが生む「第三世代テロリスト」

2013年6月号

「お宅の息子さんに間違いありませんね」  欧州の都市郊外で慎ましく暮らす老夫婦の自宅に、突然、公安警察が訪れ、インターネット上に映し出された人物の身元確認を始める。しばらく姿を見せなかった失業中の息子が、カラシニコフを手にイスラム戦士とおぼしき覆面集団と一緒に動画に登場し、老夫婦は一瞬息を呑む。貧困移民青年の転身ぶりを描き、昨年フランスで流行した映画『分解』(原題:La De´sinte´gration)の一シーンを思わせる光景は、欧米社会ではもはや珍しくない。  フランスでは、テロ関与の容疑で昨年パキスタン政府に逮捕されたオルレアン出身の若者三人が、最近になって送り返されてきた。また駐マリ仏軍はトンブクトゥでブルターニュ出身の男性、激戦が続く北部のイフォガス山地でアルジェリア系移民青年といった仏人の「ジハード戦士」を拘束。また欧州刑事警察機構によれば、シリアではフランス人約八十人、ベルギー人八十~三百人を含む推定五百人の欧州人がアサド政権と戦うイスラム勢力に加わり、兵站や連絡調整などの役割を担っているという。こうした各国の戦場に赴く戦士の中には、従来の中東・北アフリカ出身・・・