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米国を翻弄するパキスタン軍部

新政権発足後も変わらぬ「破綻国家」

2013年6月号

 五月十一日に実施されたパキスタン総選挙は、大半の国民を概ね納得させる結果になった。第一党となった「イスラム教徒連盟ナワズ・シャリフ派(PML-N)」を率いるシャリフ氏が三度目の首相となるが、勝利直後に米国やインドとの連携姿勢を打ち出し、新政権の足場作りは着々と進んでいる。    しかしこの国の実権を掌握するパキスタン軍は相変わらず米国と隣国アフガニスタンの原理主義組織タリバンを天秤にかけて自らに都合のいい結果をもたらそうと躍起になっている。今後、パキスタンは米国のコントロールがますます利かなくなるとみられている。 無人機攻撃批判は「ポーズ」  パキスタンの目下最大の課題は、経済と治安の回復だ。そのカギを握るのは軍部であり、シャリフ新首相が決められるわけではない。    選挙一週間後の十八日、軍トップのアシュファク・キアニ陸軍参謀長が、東部都市ラホール近郊の富裕層が集まる住宅地にあるシャリフ氏の自宅を訪れた。シャリフ氏の弟でパンジャブ州知事のシャーバズ氏も同席し、国内外諸問題について意見交換が行われたという。首相就任前のシャリフ氏を非公式とはいえキアニ参謀・・・