侵蝕されはじめた「国境」
離島の強奪で「領海」が消える
2013年6月号
沖縄・西表島の西隣、尖閣諸島から南に百六十キロメートルに位置する小さな島。外離島――が穏やかでない。
この島の地権者が殺された。事件は二月十六日に遡る。行方不明になった資産家の陳進福氏とその妻は、十日以上経ってからそれぞれ遺体で見つかった。場所は台北の北西、淡水河の岸辺である。三月六日に台湾人四人が検挙されたが、その後もこの事件は日台でヒートアップしている。殺された陳氏が外離島や隣接する内離島の売買をめぐり、日本人のみならず、香港の商人と接触していたことも報じられており、その背後関係から台湾メディアは「中国人民解放軍がすべてを主導しているのではないか、との疑念を持たせる」(台湾・東森新聞三月十三日)と伝えている。
外離島の総面積は、百三十二ヘクタール。ゴルフ場一個分くらいの島だが、土地の区画数(筆数)は百筆以上。本誌の調べでは、陳氏の所有地は利用可能な平坦地の大半を占める。この島に自然公園等、国の法規制はない。一部の開発は可能であろう。それゆえ、今後もし島に外国の通信施設が置かれたり、ヘリポートが計画されたとき、日本政府は制止できるだろうか。
沖縄など島嶼部で・・・