「美食の首都」から陥落したパリ
衰退するフランス料理「本国」
2013年6月号
毎年五月「サンペレグリノ世界ベストレストラン50」のランキングが発表される。二〇〇四年に始まり今年で十回目を迎えるが、近年とみに注目を集め、世界の美食の動向を測る主要な指標となっている。ランキングは世界の二十六地区、三十六人の委員(料理評論家、料理人等で構成)による投票で決定される。
この人気投票で一三年に一位に輝いたのはエル・セジェール・デ・カン・ロカ(スペイン)、二位は三年連続確保していたトップの座を譲ったノマ(デンマーク)、三位はオステリア・フランチェスカーナ(イタリア)。フランス勢は十位以内に一軒もなく、辛うじて十六位にラルページュ、十八位にル・シャトーブリアン(ともにパリ)がランクインするのみ。惨憺たる結果だ。ちなみに日本のトップはNARISAWA。アジアでは一位だが全体では二十位である。
もちろん、このランキングだけを取り上げてフランス料理が凋落した証しというつもりはない。しかし、仮に一九九〇年代であったら、確実にこのランキングの過半はフランスのレストランで占められていたはずだ。過去三百年以上美食の世界でフランスが占めていた絶対的地位が、少なくとも今、大き・・・