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WORLD

アジア経済を脅かす「イスラム・リスク」

日本企業の深刻な「悩みの種」に

2013年6月号

 バングラデシュの首都ダッカの郊外で四月末に起きたビル倒壊事故は一千百二十七人もの死者を出す痛ましい結果となった。悲惨なニュースのなかで、唯一、世界に希望を与えたのはがれきから十六日ぶりに救出された若い女性工員がいたことだ。こうした事故の場合、七十二時間を超えると生存の可能性は急激に低下するといわれており、救出は奇跡といわれた。    ビルの倒壊原因は事故直後からはっきりしていた。もともと商業ビルとして建設されたビルを外国メーカーから受注した衣料品を縫製する工場に転用したうえ、当初の建物の上に数階分のフロアを無許可で増設しており、構造強度に無理がある建物だった。そこに一千台以上のミシンが設置され、それを動かす大型自家発電装置四台も置かれていた。崩壊当時、三千人強の人が働いていたが、劣悪、危険を通り越すような労働環境だ。バングラデシュでは昨年から縫製工場で起きた火災で百数十人規模の人が亡くなる事故が連続したほか、十分な換気設備を持たない縫製工場で、酸素不足と生地の染料が発するガスで若い女性従業員が数十人単位で集団失神する事件まで頻発している。ローマ法王は今回のビル倒壊事故について、低・・・