日銀で進む深刻な「組織崩壊」
暴走する緩和策で人材流出に拍車
2013年6月号
黒田東彦日本銀行総裁による大胆な金融緩和が円安進行、大幅な株高をもたらしている。これによって、ようやく市場にも活気が蘇ってきたのは紛れもない事実だ。黒田総裁の「後ろ盾」である安倍晋三政権の支持率も歴史的な高さをキープしている。三月に発足した黒田日銀体制に対しては、まずまずのスタートを切ったとの評価がもっぱらだ。
だが、そうした評価とは裏腹に、日銀内部は一気に暗さが増し、荒廃した雰囲気に包まれている。なにしろ、直前までの白川方明前総裁の下にあって、黒田総裁が提唱する「異次元の金融緩和」をまさに否定する路線を歩み続けてきたのだ。あたかも、敗戦直後を思わせるような価値観の百八十度転換に戸惑うある日銀中堅幹部は、「これから踏み絵を踏まされるような日々となるのかも……」と不安を隠さない。
たとえば、黒田総裁が政府にコミットした「二年間で物価上昇率二%の実現」だ。これに対して従来、「実現は困難」という見方をしてきた日銀だが、組織のトップが政府にコミットした以上、もはや実現は困難という立場はとり得なくなった。
そもそも、これまで曲がりなりにも量的緩和を実施してきた日銀だが、・・・