不運の名選手たち41
プロ棋士 ( 深浦康市) 「羽生キラー」が放った奇跡の一手
中村計
2013年5月号
”羽生キラー”たるゆえんを垣間見た。
「羽生さんと殴り合いのケンカになったら勝てますからね」
プロ棋士の深浦康市は、まるで明日の天気の話でもしているかのような口調で言った。
羽生善治。言わずとしれた将棋界のスーパースターで、一九九六年に二十五歳の若さで史上初めて全七冠同時保持者となった天才棋士である。
ほとんどの棋士が羽生に大きく負け越す中、深浦は最近でこそやや負けが先行しているが一時期は羽生とほぼ互角に渡り合っていた。深浦は学年で言うと羽生の一つ下になる。したがってほぼ同世代だ。
深浦の風貌や体つきを見る限り、そんなセリフとはもっとも縁遠いタイプに映る。思わず、勝てますか、と念を押した。すると「勝てますよ」とさらりと返ってきた。
「コンプレックスの塊みたいのはイヤなんです。それでは勝てるものも勝てなくなる。だから、ひとつでもいいから上回っている部分を探すんです。そうすれば対等に向かい合えますからね」
深浦は一九・・・
「羽生さんと殴り合いのケンカになったら勝てますからね」
プロ棋士の深浦康市は、まるで明日の天気の話でもしているかのような口調で言った。
羽生善治。言わずとしれた将棋界のスーパースターで、一九九六年に二十五歳の若さで史上初めて全七冠同時保持者となった天才棋士である。
ほとんどの棋士が羽生に大きく負け越す中、深浦は最近でこそやや負けが先行しているが一時期は羽生とほぼ互角に渡り合っていた。深浦は学年で言うと羽生の一つ下になる。したがってほぼ同世代だ。
深浦の風貌や体つきを見る限り、そんなセリフとはもっとも縁遠いタイプに映る。思わず、勝てますか、と念を押した。すると「勝てますよ」とさらりと返ってきた。
「コンプレックスの塊みたいのはイヤなんです。それでは勝てるものも勝てなくなる。だから、ひとつでもいいから上回っている部分を探すんです。そうすれば対等に向かい合えますからね」
深浦は一九・・・