皇室の風 57
山折哲雄の皇太子退位論
岩井克己
2013年5月号
山折哲雄(宗教学者)の論文「皇太子殿下、ご退位なさいませ」(『新潮45』三月号)が波紋を広げている。筆者との対談(『週刊朝日』二〇一二年十一月二十三日号)での提言を同誌編集部の求めで詳述した。「よくぞ言った」との賞賛や、「不敬」との反発が巻き起こり、同誌同号は完売・増刷の売れ行きだったという。
昨秋の京都での対談は、歴史・伝統談義から天皇葬儀などの皇室儀礼など幅広く五時間以上に及び、『週刊朝日』に収録できたのは一部にすぎない。問題の山折発言も、文脈をはしょって詰め込まれた。対談の相方として言っておかねばならないと思うのは、山折の真意は、「皇太子夫妻を救いたい」との同情だったということである。ただ、そんな山折があえて「退位」を勧めたところに、事態の深刻さを思う。
対談の文脈を改めて紹介し読者の理解を求めたい。
◇
山折 私は、政治権力は天皇という宗教的権威に対して口を差し挟まない、宗教的権威の方は政治権力の批判をしない、そういう併存関係が、安定的に定まったのが一〇世紀ごろではないかと思う。戦後民主主・・・
昨秋の京都での対談は、歴史・伝統談義から天皇葬儀などの皇室儀礼など幅広く五時間以上に及び、『週刊朝日』に収録できたのは一部にすぎない。問題の山折発言も、文脈をはしょって詰め込まれた。対談の相方として言っておかねばならないと思うのは、山折の真意は、「皇太子夫妻を救いたい」との同情だったということである。ただ、そんな山折があえて「退位」を勧めたところに、事態の深刻さを思う。
対談の文脈を改めて紹介し読者の理解を求めたい。
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山折 私は、政治権力は天皇という宗教的権威に対して口を差し挟まない、宗教的権威の方は政治権力の批判をしない、そういう併存関係が、安定的に定まったのが一〇世紀ごろではないかと思う。戦後民主主・・・