原発「新規制基準」は 骨抜きに
再稼働を諦めない電力業界が暗躍
2013年5月号
それは電力業界にとって、民主党の「怨念」と呼ぶにふさわしい代物だっただろう。四月十日、原子力規制委員会は、原子力発電所の再稼働に必要となる新規制基準案を発表。そこにはシビアアクシデント(過酷事故)対策として、放射能を濾し取るための「フィルターベント」の設置などが盛り込まれた。フィルターベントはこれまでの日本の原発にはない設備で、新しく設置するには最低でも二年はかかる。赤字に苦しみ、原発を一日でも早く動かしたい電力業界には、「死刑宣告」ともいえる内容だ。当然、電力業界はこのまま引き下がるわけにはいかない。業界内では新規制基準案への不満とともに、早くも骨抜き工作の必要性を説く声が広がり始めている。
基準案を「正しい方向」に導く
原子力規制委員会がまとめた新規制基準案は、これまで電力会社が自主的に行ってきたシビアアクシデント対策を規制に乗せることが大きな柱だ。フィルターベントはそのシビアアクシデント対策の目玉といえる項目で、事故を起こした東京電力福島第一原子力発電所と同型の沸騰水型軽水炉(BWR)を対象に設置を求めた。
これは電力業界にとって「不意打ち」・・・