国際石油市場に燻る「暴落説」
OPECが怯える「チャベス後」
2013年5月号
欧州債務危機の深刻化や、中国経済の予想以上の成長率鈍化など、世界経済の変調が随所に顕在化している状況下でも、国際原油市場は二年以上にわたって高値推移が続いている。北海ブレント原油価格がこの間、一貫して一バレル百ドル以上を記録するなどは、百五十年の石油産業の歴史上、初めてのことである。同じ化石燃料である天然ガス価格が、シェールガス革命によって、米国内では五分の一に暴落したのとは実に対照的だ。目下の国際エネルギー市場は専門家の常識を超えたいびつな価格体系が続いていると言っていい。
だが、ここにきてその原油市場にも、一部の専門家の間で「暴落説」がまことしやかに囁かれ始めている。その原因はほかでもない。ベネズエラのウゴ・チャベス大統領の死だ。二〇一三年四月十九日、ニコラス・マドゥロがチャベスの「正当な後継者」として高らかに宣誓式に臨んだが、後世、その日こそが二十一世紀における原油価格暴落の始まりの日と語られる可能性が出てきているのだ。