凪の状態が続く政局の数少ない波乱要因となった選挙制度改革の議論で、政治家と裁判官の双方に、利己的で硬直的な姿勢が目立っている。国民の利益より党利党略を優先し、国家の安定より組織のメンツにこだわる姿は、統治機構の未来に暗い影を落としている。
政治の不作為と司法の自己本位
二〇一二年衆院選の一票の格差を巡り、複数の弁護士グループが各地で起こした三十三小選挙区を対象とする十六件の訴訟では、東京、札幌両高裁がまず「違憲」「選挙有効」の判断を示し、後に広島高裁と広島高裁岡山支部が「違憲」「選挙無効」まで踏み込んだ。これを受け、自民党幹事長の石破茂らは、一票の格差を二倍未満にする「〇増五減」の実現が「立法府の責務」と訴え、反対する野党を厳しく批判している。だが、その実、自民党内に危機感は乏しい。裁判官の出世コースとされる東京、札幌両高裁の判断で、流れは決まったと見ているからだ。
もともと、「むちゃな判決が出るとすれば、『前科』のある広島」との予想は、司法関係者の間で共有されていた。また、「無効」判決が確定しても、憲法違反の制度で再選挙は行えず、制・・・