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WORLD

もはや中国経済は上向かない

点火寸前の「債務危機」

2013年5月号

 歴史を振り返れば、世界が中国に対して持っていた幻想を一気に捨て去る時がある。アヘン戦争や義和団の乱で示された清の弱体ぶりは大国中国への幻想を払拭し、列強の植民地化を加速した。新中国になってからも「大躍進運動」や「文化大革命」の実態が明らかになるにつれ、共産主義の理想とはかけ離れた醜悪な権威主義と権力闘争が浮き彫りになった。そうした時、世界は中国が「張り子の虎」だったことを知る。そして今、世界は中国経済が「張り子の虎」だったことを知り始めている。  四月十五日、世界を「七七ショック」が襲った。今年一~三月の中国の国内総生産(GDP)伸び率が予想を下回る七・七%だったことで、世界経済の先ゆきに不安が台頭、新興国景気とともに高値圏を続けていた金が暴落、一次産品価格も下落した。予想との乖離は〇・三%程度にすぎなかったが、中国政府の様々な景気刺激策をもってしても、もはや中国経済が上向かないことが明らかになった衝撃は大きかった。中国経済のハードランディング・シナリオが現実化し始めた。

天文学的な額の不良債権

 ハードランディングを引き起こす最大の要因・・・