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連載

日本の科学アラカルト32

未解明の謎多い 海洋生物研究のフロンティア

2013年4月号

 四方を海に囲まれた日本では、国境防衛の脆弱性といった問題が生じる一方で、我々が受ける恩恵も膨大だ。三月に話題となったメタンハイドレートや、今年に入り発表されたレアメタルなど資源が豊富に眠っている。

 遥か三十万キロ以上も離れた宇宙に到達したのが四十年以上も昔であるにもかかわらず、わずか一万メートル先の海底まで足を踏み入れられるようになったのは、ごく最近だ。日本の周りには「未開の地」が広がっている。
「命の海」という言葉があるように、海は生命の源だという説がある。海洋における生物の実態は、宇宙と同様に発見の宝庫である。

 命の根源に迫る可能性を持つ新生物の発見が発表されたのは昨秋だった。千葉大学真菌医学研究センターの山口正視准教授らのグループは、伊豆諸島八丈島沖の深さ一千二百メートルの海底を海洋研究開発機構の調査船で調査した。そこで海底に生息するウロコムシという生物を採集して、その脚を電子顕微鏡で調べたところ、体長
約〇・〇一ミリメートルの単細胞生物を発見した。

 この細胞を詳細に調べると、一般の生物・・・