司令塔なき新国立劇場
ワーグナー生誕年で「欠陥」露呈
2013年4月号
昨年暮れ、東京・初台の新国立劇場で「二〇一三 ヴェルディ&ワーグナー生誕二百年祭」の記者会見があった。オペラ団体やオーケストラ、興行主やレコード店まで網羅。クラシック音楽界としては異例な規模の会見である。
たまたまヴェルディとワーグナーが共に生誕二百年となる二〇一三年、オペラ界二大巨頭の作品が競うように上演されている。「クラシック音楽のさらなる発展のために、国内外の有数のオペラ団体やオーケストラが集まり、一年間にわたって開催する」との告知で煽る記者会見、さぞや立派なラインナップが発表されるだろうと期待された。
だが示された内容たるやなんとも拍子抜け。新国立劇場が世界に誇るゼッフィレッリ演出の豪華絢爛「アイーダ」を筆頭に、ヴェルディは世界屈指の経済大国首都として恥ずかしくないラインナップだ。ところがワーグナーとなると、情けないの一言。舞台上演は成功とは言えぬ新国立劇場の「タンホイザー」再演でお茶を濁し、あとは抜粋上演やらオーケストラ演奏会ばかりなのだ。ワーグナーの聖地バイロイト音楽祭を頂点に世界で活躍する韓国人歌手を帰国させ、同音楽祭にも登場する演出家アルローと実力派指・・・