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経済

《クローズ・アップ》三村明夫(日本商工会議所次期会頭)

財界「地盤沈下」を象徴する人事

2013年4月号

 日本商工会議所(日商)の次期会頭に三村明夫・新日鐵住金取締役相談役(七十二歳)が内定した。有力候補ではあったが、決まってみれば意外性や財界の抱える問題が浮き彫りになる人事だ。

 まず指摘すべきは新日鐵住金からの日商会頭就任の善し悪しだ。言うまでもなく、旧新日鐵からは永野重雄氏が日商会頭を務め、一九六九年から八四年まで十五年間もその座にあった。「日商のドン」である。だが、それ以上に旧新日鐵は稲山嘉寛、斎藤英四郎、今井敬の三人の日本経済団体連合会(前身も含む)会長を輩出している。三村氏の識見や人望は先輩三人に勝るとも劣らない。三村氏はどこからみても「財界総理」たる日本経団連のトップに座るべきであり、日商会頭では「もったいない」という声は本当だろう。

 第二にみるべきは、三村氏の財界活動のキャリアと得意分野だ。三村氏は経団連副会長や日本鉄鋼連盟会長としても存在感があったが、最近で出色だったのは総合資源エネルギー調査会会長として東京電力の福島第一原発事故を受けた新たなエネルギー基本計画づくりを主導したことだ。「原発ゼロ案」を前提とする民主党の矛盾を・・・