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WORLD

「第二次アジア通貨危機」の予兆

発展のまばゆさに潜む「リスク」

2013年4月号

 危機は常に好調の中に内蔵され、多くの投資家が好機と見始めた時にはすでに頭をもたげ始めている。アジア経済は今、絶好調に近い状況にある。中国の景気は政府の積極的な投資によって「最悪期を脱し、回復軌道に乗った」と多くのエコノミストはみる。今や中国以上に期待を集める東南アジア諸国連合(ASEAN)は個人消費が盛り上がり、成長率で中国に迫りつつある。  何の不安もないようにみえるが、こうした光景には既視感がある。一九九七年七月に始まったアジア通貨危機の前夜である。

「ばらまき農政」でバブルに踊るタイ

 タイの首都バンコクは今、空前の建設ラッシュに沸いている。北部のワチャラポン、サイマイ地区では高層マンションの建設ラッシュで、価格も三年前の二倍といわれるほど急激な値上がりが起きている。商業地区のシーロムは古い建物を取り壊し、ショッピングセンターなどを建てる再開発プロジェクトが目白押しだ。ブームは地方都市にも及んでいる。バンコクに次ぐ第二の都市ながら日本や欧米の退職者が老後を過ごす落ち着いた街として知られるチェンマイも今やマンション、オフィスビルの建設・・・