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政治

《政界スキャン》

「股肱の臣」が見当たらなくなった

2013年4月号

 政治史をたどると、有能なリーダーのかたわらには、きまって有能な側近が寄り添っていた。自分にそぐう側近を見つけ出すのは、リーダーに必要な資質の一つ、という言い方もできる。

 安倍晋三首相はその点どうだろうか。菅義偉内閣官房長官、加藤勝信官房副長官らの名前があがるが、彼らは内閣の一員としての政治家側近であって、右腕とか補佐役と言ったほうがいい。過去にも名官房長官で名前が残る保利茂、二階堂進、井出一太郎、伊東正義、後藤田正晴らがいた。いずれも首相への野望など抱かず、ひたすら尽くしたが、それぞれの選挙区が気になる政治家でもあった。



 側近らしい側近というのは少し意味が違って、もっと身近にいる「股肱の臣」、俗っぽく言えば一心同体の腹心だ。池田勇人首相を内側で支えた秘書官の伊藤昌哉(一九一七年生まれ・故人)が一つのモデルである。

 伊藤は、『西日本新聞』の政治記者から請われて秘書官に転じ、池田に
「隠れた官房長官だよ」

 といわれるほど重用された。池田は大平正芳、宮澤喜一、・・・