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WORLD

弄ばれる「産油国」イラク

原油価格維持のための「生贄」

2013年4月号

大局的な話をしよう。今から十年と少し前、ブッシュ政権は何かに憑かれたかのように「対テロ戦争の次なる標的はイラクのサダム・フセインだ」と開戦に突き進んだ。このとき、多少でも地域のことを知る専門家はこの米国の狂気の真意を理解できなかった。なぜなら、フセインという重石を外したとき、そこで息を吹き返すのは何と言ってもイランの影響力の濃い、イラクでは多数派のシーア派住民であり、米国が天敵のように忌み嫌うイランを利することにはなっても、米国の国益が拡大するような展開が待っているとは到底思えなかったからである。  実際、バグダッド陥落後の情勢は危惧されたとおりとなった。米国は当初戦勝国として暫定統治の杖を握ったが、当時からイラクに覇権を確立するのはイランか米国か、と問われた。案の定、駐留米軍はシーア派、スンニ派双方の武装勢力に付け狙われて多数の死者を出し、二〇一一年末、米軍は「完全撤退」を余儀なくされた。  疑いなく、米国の中東における権益の基礎は各国のスンニ派政権との安定的な同盟関係にあるのだ。それなのに、なぜ、長年の同盟者・フセインを裏切り、シーア派政権に道を開いたのか。中東では、独・・・