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経済

JVCケンウッドに迫る中国の影

手ぐすね引く「危ないファンド」

2013年3月号

 かつて「VHS」でビデオレコーダーのデファクトを握るなど、主力の映像・音響機器分野では華々しい実績を誇ってきた名門日本ビクター(JVC)。その後の事業不振から、二〇〇八年にケンウッドと合併し、「JVCケンウッド」として新たな船出をしたのは周知の通りだが、この間の同社といえば、浮上のきっかけを掴むどころか、ただただ事業再編と企業規模の縮小を繰り返すばかり。一二年三月期の売上高は三千二百八億円にとどまったが、〇二年にはJVCとケンウッド両社を合わせて一兆三千億円に迫る売上高を誇っていたことからも、この十年の無残なまでの凋落ぶりが分かる。  そんなJVCケンウッドが、起死回生の望みを託すのが、今さらながらの「新興国戦略」である。昨年十一月の中期経営計画発表の席上、江口祥一郎社長は「三年後の一六年三月期に売上高四千億円、うち一千億円を中国など新興国で稼ぎ出す」という野心的な目標を掲げている。昨年四月には、中国進出の布石として香港企業との資本提携にも踏み切っており、今後、製造、開発の拠点を同社の中国工場へと順次移管する方針だ。  だが、周囲には追い詰められた末のこの中国進出を危ぶむ・・・