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WORLD

「発がん物質」まき散らす中国

「健康被害」本番はこれから

2013年3月号

 外国人観光客の増加に加え、企業の拠点進出も続き、全国の政令指定都市で最も元気な街と言われる福岡市。その売り物は中国に近いことだ。上海まで直線距離で約九百キロ、上海を飛び立った旅客機は一時間十五分ほどで到着する。だが、その距離的な近さが今や仇になりつつある。原因は北京周辺など中国大陸北東部から飛来する微小粒子状物質「PM2・5」。肺がんや喘息など呼吸器系の病気を引き起こす悪質な大気汚染源とされる。今年に入って、福岡市ではPM2・5の濃度が国の基準値を超える日が相次いでいる。環境省は健康に被害を及ぼす水準には達していないとはいうものの市民の不安は高まり、福岡市はホームページでPM2・5の濃度予測を毎日、発表するまでになった。

農産物は「調べるのが恐ろしい」

 冬場の北京市はどんよりとした雲が空を覆い、郊外に出ない限り、青空はみえない。一九九〇年代から続く大気汚染のためで、半ば冬の風物詩のようにもなっている。だが、その中身はこの五年で大きく変わった。かつては暖房用に燃やす石炭が主原因だったが、最近は急増した自動車の排ガスや増設された石炭火力発電所から・・・