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「尖閣問題」台湾のジレンマ

日米vs中国の狭間で「迷走」

2013年3月号

「漁?期(魚の最もとれる時期)の四月までに、日本との漁業協定を結べるかどうかは馬英九政権にとって大きな勝負だ」。壁に掛けられている大きな世界地図を前にして、台湾の外交部(外務省)関係者は先月、沖縄・尖閣諸島周辺を指さしてこのように話した。  日中関係が急速に悪化するなか、中国と同じく尖閣諸島の領有権を主張する台湾はどのような立場をとるのか、国際社会から注目されている。しかし、各方面からさまざまな圧力を受けた馬英九政権はいまのところ、態度を決められずに迷走を続けている。

「日台漁業交渉」に中国の横槍

 米ハーバード大学留学時代、博士論文のテーマに尖閣問題を選んだという外省人出身の馬氏は、「強い中華思想の持ち主で、中国の習近平総書記と同様、日本には対決姿勢でのぞみたい考えだ」(馬氏周辺者)という。とはいえ、中国に利用されることも強く警戒している。同時に、台湾の最大の後ろ盾である米国から「日中間の対立に巻き込まれるな」と釘を刺されており、ジレンマに陥っている。  一方、台湾の漁民たちは主権よりも尖閣諸島周辺の漁業権を強く望んでおり、日本との・・・