インドとパキスタンがまたまた不穏だ。今年一月、両国が領有権を争うカシミール地方で、印パ両軍の交戦が勃発し、近年、両国政府が醸成に努めてきた信頼関係は一気に崩れた。こうした軍事的な衝突が今後も続き、「事実上の宣戦布告並みの深刻な対立に陥りかねない」（インド紙記者）との観測すら出ている。パキスタンでは今年五月ごろ、インドでも来年に総選挙が予定され、両国とも融和ムードに戻る余裕がないからだ。 　一月の交戦では、インドとパキスタン両軍で五人が死亡した。二月にも、実効支配線（停戦ライン）を越えてインド側に迷い込んだとされるパキスタン兵がインド兵に射殺され、交戦が続いた。一カ月の間にこれだけの兵士の死者が出るのは二〇〇三年の停戦合意以降初めてだ。

もう通常の付き合いはできない

　死亡したインド兵の遺体は首を切断され、インド側に大きな衝撃を与えた。インドの民放テレビは「パキスタンはやはりテロ国家だ」との批判報道を繰り広げた。パキスタンをあからさまに敵視する報道ぶりは、〇八年にインド西部ムンバイで起きた同時多発テロ（日本人一人を含む約二百人死亡）直後に戻・・・