ブラジルを襲う「エネルギー危機」
政府の失政が招いた「人災」
2013年3月号
「この電力料金引き下げは、製造業にさらなる競争力をもたらす」
ブラジルのジルマ・ルセフ大統領は昨年九月七日の独立記念日に、テレビ演説で国民に向けてこう述べた。二〇一三年から家庭向け電気料金を平均一六・二%、事業者向けを最大二八%引き下げるという。経済低迷に悩むルセフにとって、一石二鳥、三鳥の妙案のはずだった。為替の自国通貨高で業績が落ち込んでいる製造業の各団体からは、電力料金引き下げや減税を要望する声が高まっており、これら製造業への「景気刺激策」と同時に「インフレ対策」にもなる。さらに言えば、行き過ぎた燃料価格統制による「逆ザヤ」で財務上の懸念が浮上している石油最大手ペトロブラスを支援するために検討していた「燃料費値上げ」との相殺にもなる。
だが、一計を案じた電気料金引き下げ策は、皮肉にも同国エネルギー政策の混乱ぶりを露呈させ、「エネルギー危機に揺れるエネルギー大国」という醜態を無残にも曝け出す結果となっている。