知られざる「欧州経団連」の実像
陰に陽に経済政策を主導
2013年3月号
欧州連合(EU)が、金融取引税の導入をめぐって再び揉めている。昨年、英国や北欧の反対により全欧的な導入を諦めたEUは、独仏伊西を中心とする「協力強化」により、二十七カ国のうち十一カ国のみで差し当たり導入することを決め、二月十四日には欧州委員会が満を持して法案を公表した。
ところが、公表当日に経済団体「ビジネスユロップ」(欧州経団連)が猛反発。法案が金融商品の取引国と発行国の双方に課税権を認めている点を問題視し、同団体のマルクス・バイラー事務局長は「欧州議会や理事会の警告を欧州委員会は無視した」と強い口調で非難した上で、「成長と雇用にとって害になる」とまでこき下ろした。
するとその二日後、金融取引税の主唱者であったメルケル首相のお膝元ドイツにこれが飛び火。連立与党を構成するはずの自由民主党(FDP)が、猛然と欧州委員会案に異議を唱え始めたのである。もともとFDPは「英国の参加しない金融取引税には反対」という立場だったが、昨夏には与野党合意に署名して一旦矛を収めていた。それがここに来て、「税収三百五十億ユーロのほとんどを実際に負担するのは小口顧客と中小企業」という新たな論・・・