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米財政を蝕む「復員軍人補償」

「テロとの戦い」の重すぎるツケ

2013年3月号

 オバマ米大統領がアフガニスタンからの米軍撤退を加速させている。来年初めには現行の六万六千人から三万人あまりまで減らし、「戦争に明け暮れた十年」を終わらせる方針だ。だが、復員軍人の補償支払いはこれからが本番で、財政面での終わりなき戦いが、オバマ政権の二期目を襲っている。  オバマ大統領が二月の一般教書演説で「私は戦争を終わらせる」と強調するたびに、テレビカメラは、エリック・シンセキ復員軍人長官の姿を追った。端正な表情を崩さず、スタンディング・オベーションを繰り返した長官は、次なる戦いの主役だからだ。政府予算全般に厳しい緊縮が求められる中、復員軍人省は今年、前年比で一〇%以上多い一千四百億ドルを確保しなければならないのである。 「兵隊たちが帰還すれば、彼らの面倒を見なければならない。復員軍人には新しい仕事も必要だ。彼らにふさわしい尊敬も与えられなければならない」と、シンセキ長官は一般教書演説の翌日、淡々と語った。だが彼が率いる復員軍人省の予算は、二〇〇一年に五百億ドルだった。十年あまりで三倍近くに膨れ上がったのでは、陸軍参謀総長時代にラムズフェルド元国防長官に公然とはむかった・・・