三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

社会・文化

雅子妃は治らないのか

「療養十年」の医学的深層

2013年2月号

 雅子皇太子妃が「適応障害」という一般にはあまり馴染みのない病名をつけられ療養を始めてから、十年あまりになろうとしている。この問題に関しては、最近でも関心は高く、「ご病気」の診断と治療について、さまざまなメディアで繰り返し議論が行われてきた。  具体的な論点として、医師団の言う「適応障害」という診断は正しいものなのか、長期のご静養にもかかわらずなぜ症状がなかなか改善しないのか、あるいは皇太子妃としての公務を十分に果たせないことは認めてもいいのか、などといった点について、議論されることが多い。

「慢性うつ病」に相当

 うつ病治療に詳しい大学病院の精神科医によれば、「雅子妃の病状についても、経過に関しても、疑問な点はほとんどないと言ってもいいくらい自明なことが多く、大騒ぎすること自体が不思議」だという。  まず診断について検討してみよう。そもそも「適応障害」という診断名は、アメリカ精神医学会の診断基準(DSM-・=精神疾患の診断と統計の手引き)に記載された新しい用語である。この病名は、「ストレスによって引き起こされた、軽度の精神的な不調」・・・