官邸外交の「舞台裏」
「陰の外相」谷内正太郎の思惑
2013年2月号
東南アジア歴訪で外交の基本方針と位置付ける「安倍ビジョン」を打ち出した安倍晋三首相。その柱は民主主義や市場経済、法の支配といった価値観を共有する国々との連携推進で、背後でこれを主導したのは安倍が全幅の信頼を置く谷内正太郎内閣官房参与である。これまで外交や安全保障は外務、防衛両省が主導するのが通例だったが、安倍は官邸主導の外交を追求。その黒子役こそ谷内であり、政府内では「陰の外相」との異名まで聞かれる。谷内はどんな構想を描いているのか。官邸外交の内実をひもとく。
谷内―兼原ラインが主導権
「尖閣諸島に自衛隊が常駐するとすれば、どのような施設が必要となるのか選択肢を示してほしい」。衆院選前の昨年十月、谷内の命を受けた外務官僚が防衛省サイドにボールを投げてきたと自衛隊幹部は明かす。安倍首相の誕生を前提として、谷内は腹心の兼原信克内閣官房副長官補とともに、早い段階から安倍外交の基本構想を練っていたのである。
このコンビは第一次安倍内閣で外相を務めた麻生太郎副総理に仕え、「自由と繁栄の弧」構想を企画・・・