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タイ国王「Xデー後」の混沌

周辺諸国にも影響大

2013年2月号

 昨年十二月五日、タイのプミポン国王(ラーマ九世)は八十五歳の誕生日を迎えた。バンコク中心部にある宮殿のバルコニーに姿を現した国王は、集まった二十万人を超える国民を前に「互いを思いやる気持ちがあれば、タイはこれからも安定する」と訴えた。国内を二分して、いまだに火が燻り続けるタクシン派と反タクシン派の政治対立を念頭に置いた発言と解釈される。  国王が国民の前に姿を見せたのは二〇〇六年の即位六十周年記念式典以来のこと。〇九年に入院して以降、一昨年には危機説もあっただけに、回復したかに思える。しかし、想像以上に衰えた姿が伝える現実はあまりに残酷だった。 「健在であることをアピールしなくてはならなかったのだろう」  タイ現地紙のベテラン政治記者はこう声を潜めた。水面下で続く政治対立に危機感を覚える王室とその周辺が引きずり出したとの見方だ。昨年からプミポン国王のコメントや、写真公表によって、こうしたアピールが繰り返されてきた。一月十七日には、東南アジアを歴訪していた安倍晋三首相がタイを訪れ、プミポン国王を表敬している。この記者が続ける。 「王室周辺の努力はむしろ危機説を助長するだ・・・