三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

社会・文化

利権化する「高台移転」事業

群がるURとゼネコン

2013年1月号

 東日本大震災によって壊滅的打撃を受けた岩手、宮城両県の沿岸被災地では、ここにきてようやく、「防災集団移転促進(防集)事業」(国土交通省)、いわゆる「高台移転」事業がスタートした。しかし、宮城県石巻市雄勝地区のように地元住民の九割が高台移転に反対するケースのほか、「造成しても移転者が少なく、ぺんぺん草が生えるのは確実」「巨額の復興予算を投入して、人が住まなくなる限界集落を作るようなもの」との疑問の声が早くも各地で上がっている。  さらに、動き出したこの巨大な公共事業をめぐって利権の臭いをかぎつけた国交省周辺の“土建ムラ”の住人たちが、その利権構造の中で早速、蠢き始めている。なかでも業界関係者でさえ首を傾げているのが、各地で進む高台移転事業の発注者に、当該自治体とは別に、国交省傘下の独立行政法人都市再生機構(UR)がいくつも名を連ねていることだ。業界関係者はこう告発する。「すでにUR発注の高台移転事業は、宮城県女川町や東松島市、岩手県陸前高田市などで一部始まっているが、事業主体を務めるなら地元なら岩手県や宮城県の土地開発公社がふさわしいし、行政機関のマンパワー不足を補うためというの・・・