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社会・文化

新生「ディオール」と「サンローラン」の美

伝統と革新を秘めたトップブランド

2013年1月号

 フランスを代表する高級ファッション業界に、新しい波が訪れている。パリの老舗ブランドであるクリスチャン・ディオール社の「ディオール」とイヴ・サンローラン社の「サンローラン」が新たなアーティスティック・ディレクター(デザイナー)を擁して、若返りを図っている。両社はそれぞれ、LVMH(モエ・ヘネシー・ルイヴィトン)グループ傘下とPPRグループ傘下にあり、巨大なブランドビジネスの象徴的存在。そんな老舗ブランドが、一二年から新しいディレクターの下でさらなる顧客獲得へと乗り出した。 「ディオール」のディレクターにはベルギー人デザイナーのラフ・シモンズ、「サンローラン」にはフランス人デザイナーのエディ・スリマンが就任した。いずれも一九六八年生まれで、一九九〇年代後半からメンズのデザイナーとしてキャリアを積んだ。このデザイナー交代劇は一二年三月末から四月にかけて相次いで発表され、新体制による作品発表を巡って世界のファッション業界から注目が集まった。  そもそも、フランスのラグジュアリーブランドのビジネスは、どういうシステムで成り立っているのか説明したい。まず頂点にあるのはオートクチュール・・・