不運の名選手たち37
前田将良(体操選手)試合開始「直前」で終わった五輪
中村計
2013年1月号
試合開始三十分前。
前田将良の記憶の中では、そういうことになっている。
「ケガをするような練習ではなかったんですけどね」
一九九六年七月二十日、アトランタ五輪第二日。ジョージアドームでは、体操男子団体の規定演技が始まろうとしていた。
前田が、鉄棒のウォーミングアップ中、「上向き飛び越し」という鉄棒の上を横向きに飛び越す技を試したときだった。
「タイミングがばっちり合って、ちょっと高く上がり過ぎた。飛んだ瞬間、『うわー、すげー。今の俺、世界一高いんじゃない?』みたいな感覚でしたから」
だが、そのせいで、若干鉄棒との距離感がずれ、「ギリギリ手が届かなかった」。直後、やや硬質な着地マットの上に腹から落下した。ここまでは、練習でもよくあることだった。
「落ちるのなんて、普通のことですからね。ただ、腹ばいに落ちたとき、つま先が先に当たった反動で、少し前に体重がかかった」
グキッ。周囲の関係者は、そんな鈍い音を聞いた。だが、・・・
前田将良の記憶の中では、そういうことになっている。
「ケガをするような練習ではなかったんですけどね」
一九九六年七月二十日、アトランタ五輪第二日。ジョージアドームでは、体操男子団体の規定演技が始まろうとしていた。
前田が、鉄棒のウォーミングアップ中、「上向き飛び越し」という鉄棒の上を横向きに飛び越す技を試したときだった。
「タイミングがばっちり合って、ちょっと高く上がり過ぎた。飛んだ瞬間、『うわー、すげー。今の俺、世界一高いんじゃない?』みたいな感覚でしたから」
だが、そのせいで、若干鉄棒との距離感がずれ、「ギリギリ手が届かなかった」。直後、やや硬質な着地マットの上に腹から落下した。ここまでは、練習でもよくあることだった。
「落ちるのなんて、普通のことですからね。ただ、腹ばいに落ちたとき、つま先が先に当たった反動で、少し前に体重がかかった」
グキッ。周囲の関係者は、そんな鈍い音を聞いた。だが、・・・