《土着権力の研究》奈良県 東大寺
古都に君臨する僧集団
2013年1月号
県庁舎などが並ぶ奈良市中心部の東、若草山の麓に広大な敷地が広がる。鹿が悠然と行き交う南大門をくぐり、まっ直ぐ進んだ中門の先に、巨大な大仏殿が鎮座する。
修学旅行生でごった返した秋が終わると、境内は冬を前に一旦静かになる。しかし大晦日には除夜の鐘を撞きに人が集まり、年が明ければ初詣参拝客で溢れる。
華厳宗大本山・東大寺―。言わずと知れたこの町のシンボルの一つだ。奈良に数多居並ぶ寺の中でもその存在感は抜きんでている。誰もが気軽に訪れて大仏を拝むことができる一方で、強固な閉鎖性を併せ持つ。薄汚い利権にまみれた「土着権力」とは様相が異なる。ただし、荘厳で近寄りがたいというだけではなく、その影響力は奈良県・市政はもちろん、時に国にまで及ぶ。奈良県議会議員の一人はこう語る。
「他の都道府県にはびこっているような権力者は見当たらない」
奈良には、県議会や知事をコントロールできるドンや、地元で権威を誇る国会議員はいないのだ。かつてあった有力建設会社が倒産して以降、財界もパッとしない。あえて挙がるのは、県内唯一の地・・・