危うい危うい安倍自民
政権公約は「その場しのぎ」だらけ
2012年12月号
大風呂敷を広げすぎて破綻した二〇〇九年民主党マニフェストを反面教師にしたのだろう、十二月の衆議院選挙に向けて、各党とも将来の国家像や夢を語らなくなっている。代わりに、選挙戦術を優先させた小ずるい表現や理屈を使い、国家の重大事をその場しのぎでごまかす姿勢が目立つ。
その最たる例は、自民党の安倍晋三総裁だろう。
例えば、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉への参加に関する物言いだ。つい最近まで「聖域なき関税撤廃が前提である限り参加しない」と言っていたのが、「すべて関税ゼロだというところを突破していく交渉力が大事だ」と、交渉そのものは容認する立場を訴え始めたのである。言うまでもなく、転換点は衆議院の解散だ。安倍の「交渉力」発言も、野田佳彦総理大臣が衆議院解散の意向を表明した翌十一月十五日、日本商工会議所の幹部との懇談会の場で飛び出した。
農業関係団体や医師会など、TPP交渉に入ること自体に強硬に反対する自民党の伝統的な支持基盤を離反させないよう、安倍は「これまでと同じことを言っただけだ」ととぼける。一方、TPPに加盟しない選択肢はないと信じる財界は、安倍の変化・・・