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政治

政治の劣化は国民にも責任

ロナルド・ドーア(ロンドン大学名誉教授)

2012年12月号

 ―多党化選挙に突入する日本の政治情勢がますます混沌としています。
 ドーア
 橋下氏と石原氏の同床異夢連携に何ら新しい主義主張がみられないことが示すように、現在の日本の第三極ブームは、組織としても思想としても分別がない既成政党への幻滅にほかならない。日本と同様に、既成政党が魅力を失ってしまったイタリアでも、出てはすぐ破裂してしまう「液体政党」が乱立しているが、結局それが政治に対する国民の関心をつなぎとめるために必要な現象だということだろう。ただし、この動きの中で登場してくる政治家は人気中心、もしくはエゴ中心で、原理原則を重んじる人物は残念ながら見当たらない。

 ―反原発デモなどで一部には政治への国民意識の高まりがみられますが。
 ドーア
 債務危機に陥っている欧州では国家支出の削減に対して若者が激しく反発してデモを起こしている。また米国でもOWS(Occupy Wall Street)運動などの草の根運動が広がっている。日本でも、すでに報道されている年金や社会保障の実態をみれば、我々外国人の目からみても事態は十分に深刻・・・