激変する世界の原子力発電事情
もはやコスト面でも勝てない
2012年11月号
二〇一一年三月の福島第一原子力発電所事故のほとぼりも少しずつ冷め、原発の売り込みを再び活発化させ始めた世界の原発関係者に冷水を浴びせる驚愕が走った。八月二十八日、米国の電力企業大手エクセロン社がテキサス州南部のビクトリア市近郊に新設を計画していた原発建設計画の取り止めを決定したのだ。
一九七九年のスリーマイル島事故以来、原発の新設は一基も行われていない米国だが、環境保護派で鳴らすオバマ大統領は、「炭酸ガスを排出しない原子力発電は重要なエネルギー」と言明し、米国原子力規制委員会(NRC)も、「福島第一原発事故を踏まえ、安全性を慎重に調査のうえで」との条件の下で、原発の新設に前向き―とされてきた。
事実、米国の発電事業者からは、二十八基に達する原発の新設がこれまでに申請されており、米国では東芝―ウエスチングハウス連合、日立製作所―ゼネラル・エレクトリック(GE)連合による原子力商戦に沸いていた。それだけに、一段とエクセロン社の原発建設計画撤回が、原子力業界に与えたダメージは甚大だ。エクセロン社が原発新設を取り止めた理由は、「安全性への不安」でもなければ、「原発アレルギー」・・・