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WORLD

中東を「攪乱する」ロシア

冷戦時代さながらの「パワーゲーム」

2012年11月号

 十月九日、イラクのマリキ首相はモスクワを訪問、四十二億ドル相当のロシア製武器調達契約に署名した。この契約はMi28戦闘ヘリコプター三十機や防空ミサイルシステムなど、イラク国軍の主力装備を購入することが目的である。  突然降って湧いた話ではない。契約は五カ月も前から水面下で進められていた交渉の結果であり、また、Mig29戦闘機や重装備装甲車両などの重要装備の追加購入も俎上に載っていることが共同声明で明らかにされた。翌日行われたマリキ首相とプーチン大統領との会談では、ロシア企業が今後のイラクでの石油・ガス開発に関し、これまで合意されている以上に便宜を受けることができると確認されたという。一方で、米国系資源メジャーのエクソンモービルはイラクの西クルナ油田プロジェクトからの撤退を真剣に検討していると伝えられ、これら一連の動きは、中東の「ハートランド」イラクが、いよいよ親ロシア路線に大きく舵を切ったことを示すものと受け止められた。権謀術数渦巻く中東の世界にロシアが帰ってきた。

「抵抗枢軸」の頼れる後ろ盾に

 本誌が五月号で指摘したように、ロシアはシ・・・