ユーロ危機さなかのヨーロッパで、各地域の分離・独立運動が先鋭化している。今回の波は、スペインのカタルーニャやベルギーのオランダ語圏フランドルなど、国内では比較的豊かな地域が、貧しい地域への富の流出を嫌がるのが特徴である。各国政府が緊縮財政に動く中で、「自分たちの暮らしだけを守る」という排他的・自己中心的なポピュリズムが欧州で吹き荒れている。

地域エゴイズムは深刻

　ベルギー最大の港湾都市、アントワープは十月半ばともなると、夜の冷え込みが厳しい。だが十月十四日の日曜日は、異様な熱気に包まれた。分離主義色の濃い「新フランドル同盟」が、同日投開票された地方選挙で圧勝し、バート・デウェーフェル党首がアントワープ市長に選ばれた。今年四十二歳になる党首はここ数年、「フランドル分離」を掲げてベルギー政界の台風の目になった。二〇一〇年の総選挙後に第一党となり、その後の連立交渉では、「フランドル自治拡大」を頑強に主張して、五百四十一日の政治空白を作った張本人だ。 　アントワープは左派の牙城で、第二次世界大戦後は市政を明け渡したことがなかった。同盟の四割近い・・・