欧州最強国ドイツの「秘密」
社会を安定させるキリスト教
2012年11月号
「十四歳年下の若妻に狂い、俗物となり果てて地位も名誉も失った五十代のほぼ無職男に、血税から毎年二千万円を無償支給。しかもこの男が生き続ける限りは永遠に」
いまドイツ国民が最も猛烈に憤っているのは、欧州連合(EU)経済の足枷となっているギリシャでもスペインでもなくこの問題だ。新妻との新居やバカンスについて企業家から便宜を受けていた疑惑がこじれて二月に連邦大統領(以下、大統領)を辞任したクリスティアン・ヴルフ氏は、もはや「国の象徴」どころか「国恥」としての扱いしか受けていない。刺青入りで娼婦歴の噂が絶えない「若妻」ベッティーナ夫人は、業を煮やしてグーグルの予測検索機能に対し訴訟を挑む一方、九月に出版された自著『儀典の向こう側』では自己弁護に余念がなく、国民やメディアから白眼視されている。収賄の容疑で検察の捜査を受ける大統領経験者など同国には例がなく、この夫婦の顰蹙行動と相俟って年間二十一万七千ユーロの「名誉歳費」は猛烈な批判の対象となっているのだ。